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このページは、オーエン・コルファーの本の感想のページです。

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「アルテミス・ファウル-妖精の身代金」角川文庫(2007年10月読了)★★★

アルテミス・ファウルは、何世代にも渡って悪事を働いて金を蓄えてきたた伝統的な犯罪一家・ファウル家の12歳の少年。父親であるアルテミス・ファウル1世が乗った船がロシアのマフィアによって木っ端微塵にされて消息不明となって以来、母のアンジェリーンは神経症で寝たきりとなってしまい、アイルランドの屋敷にはアルテミスのボディガードのバトラーと、母のメイドとしてバトラーの妹・ジュリエットが共に暮らしています。父の事件で失った財産の穴埋めをして家運の挽回するためにアルテミスが立てたのは、妖精から黄金を奪う計画。人間と同じように金の好きな妖精は、それぞれに黄金を隠し持っていることをアルテミスは知っていました。そのためにアルテミスは広くインターネットで妖精(ピープル)の目撃証言を求め、ようやくベトナムで出会えた妖精から「妖精の書(フェアリーズブック)」を入手し、妖精の言葉を人間の言葉に翻訳して、綿密な計画を立て始めます。(「ARTEMIS FOWL」大久保寛訳)

「アイルランドのハリー・ポッター」「悪のハリー・ポッター」などと称されて、出版前から大きな話題になった作品なのだそう。確かに「悪のハリー・ポッター」という言葉に相応しく、主人公のアルテミス・ファウル自身が犯罪一家の跡取りとして生まれた少年ですし、妖精の存在もよくある「綺麗」「可愛い」という言葉からは程遠い存在。伝統的な魔法の力は持っているのですが、素朴な自然の世界に生きているどころか、科学的には人間よりも遙かに進んでおり、日頃からハイテク武装しています。「レプラコーン」という言葉の起源が、実は「LEP(地底警察(ロワー・エレメンツ・ポリス)レコン」だというのが可笑しいところ。技術的には人間よりも遙かに進んでいる彼らが表舞台に出て来ず、地下の世界に暮らしているのは、ひとえに人間の方が繁殖力が強いせいなのだそう。ということで、この2つの種族の戦いは、情報と頭脳とハイテク技術を駆使した戦いになります。
善と悪の対決ではなく、どちらの側も正義の味方とは言えないという意味で、新しいファンタジーと言えそうです。しかし肝心のアルテミス・ファウル自身に悪の魅力を全く感じられなかったのが、とても残念。神童と言われる天才的な頭脳の持ち主だという面をもう少し実感できたら、もう少し違った印象を持てたのかもしれないのですが…。そんな悪の少年が実は母親思いだった、と言われても、とってつけたようにしか感じられませんでしたし、意外な一面というよりも、正直興醒めでした。あと、せっかくの「妖精の書」が、ほとんど冒頭でのみの登場となってしまったところも残念。せっかく魅力的な小道具なのですから、もっと物語全般において重要な存在として欲しかったです。

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