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このページは、クライブ・バーカーの本の感想のページです。

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「アバラット1」ヴィレッジブックス(2007年12月読了)★★★

キャンディ・カッケンブッシュは、ミネソタ州のチキンタウンで生まれ育った少女。チキンタウンの歴史について調べた学校の宿題が歴史教師のミス・シュウォーツの気に入らず、ひどく怒られたキャンディは、この2日ほど心の中でうねっていた海の波に呼ばれるように、そのまま学校を飛び出してしまいます。そして辿り着いたのは、朽ち果てて骨組みを遺すばかりの塔がそそり立っている場所。そして出会ったのは、ジョン・ミスチーフとその7人の兄弟。ミスチーフたちはメンデルスン・シェイプに追われており、ミスチーフに頼まれたキャンディは、言われるがままに灯台だというその塔に登って火を入れることに。そして火がついた時、どことも知れない虚空の果てから、怒涛の海が打ち寄せてきたのです。それは母なるイザベラ海でした。(「ABARAT」池内耿訳)

アバラット4部作の1作目。
突如現れたイザベラ海の向こうには、「正午の島」から「25時の島」までの25の島々が浮かぶアバラットの世界があり、それぞれの島には人間だけでなく様々な異形の存在も… というアバラットの世界を舞台にした冒険ファンタジー。この辺りの設定は巻末の「『クレップ年鑑』抜粋」に書かれており、それを読むだけでも異世界の存在を楽しめます。それにキャンディが実際にミネソタからアバラットへと行く方法も、今までなかった奇抜な方法で面白いですね。実は盗賊だというミスチーフ兄弟や、「真夜中の島」の支配者であるキャリオンなどの登場人物もそれぞれに個性が強烈で、それぞれの人物の過去のエピソードだけでも1冊書けそうに思えるほど。それらの人物像がこの世界観と相まって重厚なファンタジーとなっています。翻訳の文章に多少クセがあることもあり、純粋な児童書というよりも大人が読むのに相応しいような、読み応えのあるファンタジー。
ただ、世界観はとても面白いのですが、私自身は1巻を読んで感情移入をするところまではいかなかったのが残念。文庫には挿絵はないのですが、ハードカバーには著者自身による挿絵がふんだんに使われているとのこと。それも作品世界の雰囲気を盛り上げるのに一役買っているようなので、ハードカバー版を読んだ方が、異世界や異形の存在を理解しやすい作品なのかもしれません。

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