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このページは、いとうせいこうさんとみうらじゅんさんの本の感想のページです。

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「見仏記」角川文庫(2003年11月読了)★★★★
京都出身で、小学生の頃から詳細なスクラップブックを作っていたほどの筋金入りの仏好きのイラストレーター・みうらじゅん氏と、仏友の作家・いとうせいこう氏が、京都から東北、奈良、九州、そして再び京都と仏を見て回る「見仏記(けんぶつき)」。仏への愛情がたっぷり感じられる1冊です。

興福寺の有名な仏頭を一目見て「加藤登紀子」と言い捨てるみうらじゅん氏。ここでまず度肝を抜かれましたが、その後も仏像ミュージシャン説や「仏像にわびさびを入れちゃ駄目でしょう?」などの発言が次々に登場、すっかり2人のペースに巻き込まれてしまいました。お2人の笑えるやりとりの中には、思わぬ鋭い指摘が潜んでいて、驚かされっぱなし。みうらじゅん氏の破天荒な直感のままに語られる言葉は、いとうせいこう氏の中を一度通過することによって理論化されて読者へと伝わり、逆にいとうせいこう氏の飛躍した考察を、みうらじゅん氏のイラストがさらりとフォローするという感じ… と思っていたら、終章間際でそれについて言及されていました。本当にいいコンビですね。
私は東北の仏をほとんど見たことがないので、京都の仏との比較の話が特に面白かったです。絵師が東北にも仏を作ろうと京都に行き、しかし下から見上げて絵を描いたのでパース(遠近法)が狂ってしまった、東北に帰るまでに色が分からなくなってしまった(当時は当然墨絵)、正面からしか見ていなかったので、いざ作ろうとすると妙に平たくなってしまったなど、色々な説には妙に説得力があります。確かに、「東北人らしい荒々しさ」や「厳寒が生んだ造形」などという言葉よりも、余程分かりやすいですね。そして、九州が、四方八方からの交通の交差する場所というのも納得。同じ日本の中で、同じように仏を作っていても、場所によって色々特色があるのですね。色々と見比べてみたくなってしまいました。
寺院と仏という一見硬そうなテーマを元に、これほど面白い読み物が出来上がるとは。もしかしたら、この本をきっかけに、仏像に興味を持つこともありそうです。私もまた、“若山富三郎”広目天、“勝新”多聞天に会いに、当麻寺に行きたいです。
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