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このページは、チャールズ・フレイジャーの本の感想のページです。

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「コールドマウンテン」上下 新潮文庫(2007年9月読了)★★★★

南北戦争末期。ピーターズバーグで首に銃弾を受け、瀕死の重症を負った南軍兵士のインマンは、仲間の兵士たちや医師が手の施しようがないと判断したにも関わらず野戦病院まで生き延び、さらに出身州の正規の病院に移される間も生き延びて、ようやく傷が治り始めます。何週間もかけて少しずつ良くなってきたインマンは、今ではベッドでバートラムの「旅行記」を読んだり、外を眺めたりする日々。そんなある日、自分が病院から町まで歩けることを確認したインマンは、夜中に目を覚まし、恋人だったエイダの待つコールドマウンテンの町を目指して病院から脱走することに。(「COLD MOUNTAIN」チャールズ・フレイジャー訳)

全米図書賞受賞作品。
南軍から脱走し、追っ手から逃れながらひたすらコールド・マウンテンに向かうインマンと、牧師だった父を失い経済的にも破綻して、ルビーという少女と共に暮らしを立て直そうとするエイダの2つの物語。恋愛小説ではあるのでしょうし、南北戦争をめぐる人々のドラマでもあるのでしょうけれど、そういった人間ドラマよりも様々な土地や自然の美しさや厳しさといった魅力が強く感じられた作品でした。特に父の死後、すっかり荒れ果てていた黒谷を自給自足できる農場に作り変えようと決意したエイダの目に映る自然の情景が魅力的。そして、チャールストンの上流階級に生まれて、女性には十分すぎるほどの教養を持ち、しかし生きるということは今まで銀行でお金を下ろしてくること程度の認識しかなかったエイダですが、バイタリティたっぷりのルビーによって、徐々に逞しく生まれ変わっていきます。そしてこのルビーが主役の2人以上に魅力的なのです。教養としての学問こそ全く持ち合わせていなくとも、ルビーは生きるための知識や経験は十分に持っており、人間が生きるというのは本来こういうことなのだと思わせられます。それまで生き延びるには必要ない机上の知識しか持ち合わせていなかったエイダが、自分とは正反対のルビーに様々なことを教わり、新しく得た知識からさらに色々な発見をして、その知識を深めていくところがとても良かったです。逃亡中のインマンも生き延びようとしているという意味ではエイダたちと同じですし、そこには様々な人間との出会いや別れ、そしてドラマがあるのですが、日々の生活の中で着実に何かを作り上げつつあるエイダとルビーの方が前向きなので読んでいて楽しかったですし、その中ではやはりルビーが光っていたように思います。

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