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このページは、荻原規子さんの本の感想のページです。

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「ファンタジーのDNA」理論社(2006年11月読了)★★★★
小学校の時、児童文学の中でファンタジーに出会ったという荻原規子さんによる、ファンタジーにまつわるエッセイ。主に理論社のホームページに2年間連載されていたウェブエッセイを本にまとめたもの。

ファンタジー作家さんとは子供の頃の読書体験が共通しているのだろうなと感じることが多いのですが、荻原さんともかなり共通しているようで、しかもにドイツファンタジーよりもイギリスファンタジーが好きという部分も同じせいか、とても興味深く読めました。ドイツファンタジーとイギリスファンタジーというのは、ユングの「思考」「感覚」「感情」直感」の4タイプが、ファンタジーにも通じるという話。思考タイプの典型はヨースタイン・ゴルデルの「ソフィーの世界」で、ドイツファンタジーに多く、感覚タイプの雄はトールキンの「指輪物語」で、イギリスファンタジーに多いというものです。
この中で特に興味深かったのは、アラン・ガーナーの「ふくろう模様の皿」が、「へたなファンタジーよりも、ずっと恐い」という話。この作品はウェールズに残るケルト神話の色濃い作品なのだそうですが、「神話が深みからひっぱり出してくるものは、理性では手におえない強制力をもち、かなり恐い」のだそうです。ファンタジーを書くには神話や伝承、昔話に親しんでいることが必須だけれども、一歩扱いを間違えると、書き手である個人を破壊しかねないほど強力なものなのだとか。「ふくろう模様の皿」の映像化の際のエピソードには本当に驚きました。この作品は未読なので、ぜひ近いうちに読んでみたいです。
そして次に興味深かったのは、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品について。「DWJ作品の最大の特徴は、多くの印象鮮やかな場面にもかかわらず、物語のてんまつを長く覚えていられないことではないだろうか」という言葉は、本当にその通りですね。私もかなり沢山読みましたが、覚えていられるのはそれぞれの作品の印象だけ。顛末に関しては、本当に見事なほど覚えていられないのです。「ハウルの動く城」のアニメを見ても原作ではどうだったか思い出せなかったというのも、荻原さんと同様。DWJ自身がナンセンス・ストーリーを書こうとしているのではないのに、終盤になると決まって「わや」になるのは、荻原さん曰く、ストーリーの定石を知りすぎているから。DWJは「みんなのよく知っている仕立ての物語を用いながら、ストーリーはこびも人物設定も、そこからわざとはずしてみせるのだ。書き手がそれをくり返すから、話が進むにつれて、読者の常識的な頭が混乱してくるらしい」なのだそうです。確かにそうかもしれないですね。単にどんでん返しが多すぎて覚えていられないという面もあるとは思いますが…。DWJは私にとって、おもちゃ箱的な楽しさがある反面、どうしても違和感を感じる作家。色々な考察を読むほどにとても興味深いです。 
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