Livre TOP≫HOME≫
Livre

このページは、石田衣良さんの本の感想のページです。

line
「LAST」講談社(2003年10月読了)★★
【ラストライド】…借金の返済ができず、家族を売るか自分が死ぬか選ぶことになった男。
【ラストジョブ】…不況による夫の収入減。夫に内緒でカード破産寸前にまで陥っている妻。
【ラストコール】…テレクラで出会った女性に、今までに出会った男達の話を聞かされる男。
【ラストホーム】…職を失い家賃が払えないために、ホームレスになることを決意した男。
【ラストドロー】…街金に借金を返すため、言われるがまま犯罪行為に手を染めることになる男。
【ラストシュート】…エリート外科医について、ベトナムに売春ツアーに同行することになった男。
【ラストバトル】…借金のために、飼い殺しでローン会社の看板持ちをしている男。

7つの短編のうち5つの話の主人公が、借金やら何やらで崖っぷちに立ってしまっているという話、残りの2人はそういう人間に巻き込まれた話。それらの人生模様は、決しておどろおどろしくではなく、逆に淡々と描かれているとも言えるのですが、しかしそれが却って迫力を生み出しているような気がします。それぞれになかなかハードで、短いながらも吸引力が非常に凄いです。読んでいると、自分もそちら側に引っ張られてしまいそうで妙に怖くなってしまったほど。
それぞれの登場人物たちが、それぞれの状況に対して、何らかの決断を下し、何人かはある一線を越えてしまうことになります。この一線を越えてしまうのが、案外簡単であることに気付いてしまうという部分も、何とも皮肉ですね。そしてこの決断が吉と出ても凶と出ても、それでも容赦なく人生は続いていくのですね。その部分が非常に痛かったです。

「電子の星-池袋ウエストゲートパークIV」講談社(2003年10月読了)★★★
【東口ラーメンライン】…G・ボーイズを卒業したツインタワーこと双子のタモツとミノルが新しく始めた仕事は、ラーメン屋。しかし開店から3ヶ月、ネットで悪質な嫌がらせが相次ぎます。
【ワルツ・フォー・ベビー】…東京芸術劇場の裏側のテラスで、マコトはジャズ・タクシーの運転手・南条靖洋に出会います。彼は今でも、5年前にこの場所で死んだ息子の事件を追いかけていました。
【黒いフードの夜】…マコトが捨てようとした腐りかけの果物を欲しがったのは、ビルマ人中学生のサヤー・ソーセンナイン。サヤーは9歳の時から違法デリヘルで売春のアルバイトをしていました。
【電子の星】…親友のキイチが大金を残して行方不明になったのを心配して、山形から上京したテル。マコトとテルはキイチの部屋で、プロによるSMクラブの人体損壊ショーのDVDを見つけてしまいます。

実は「骨音」や外伝の「赤黒」では少々マンネリを感じ始めていたのですが、今回はなかなか良かったです。しかしごく日常的な「ラーメン屋」の事件から始まったこの1冊、とんでもない展開を見せてくれます。
「東口ラーメンライン」この中の「ラーメンの思考には特殊な副作用がある」には、非常に納得。本当にラーメンほど、一度頭に浮かんでしまったら離れない食べ物ってあまりないですよね。「ワルツ・フォー・ベビー」現実は厳しいけれど、きちんと知ることはやはり大切だと思います。南条靖洋の最後の態度が好きです。「黒いフードの夜」最後のマコトの解決案は、あまりに残酷。確かに効果的ではあるのでしょうけれど… これは人としてどうなのでしょうか。本人もそれは分かっているようですが、しかしやはりこれは、たとえそれだけ怒りが強かったとしても、許されないことなのでは。「電子の星」ここで描かれる「SMショー」は、あまりにグロテスク。思わず想像して気持ちが悪くなってしまいました。確かにインパクトは強いですし、マンネリも吹き飛びますが… しかしシリーズに刺激を与えるためにこういうネタになるのなら、いっそのこと水戸黄門的なマンネリを目指した方がいいような気もしてしまいます。少々複雑。それでもこれが現実なのでしょうね。恐ろしいです。
Next≫
Livre TOP≫HOME≫
JardinSoleil

Copyright 2000-2011 Shiki. All rights reserved.