アーサー・ラッカムの描く妖精や少女たちの独特の存在感に引き込まれます
リンク先はアマゾンの和書ですが、一部アマゾンの洋書等から画像を借りてきています
アーサー・ラッカム挿画作品■
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真夏の夜の夢」ウィリアム シェイクスピア著 アーサー・ラッカム絵(伊東杏里訳)新書館(1979/09)
荒俣宏氏は、ラッカムの作品のベスト3は「真夏の夜の夢」「ピーターパン」「ニーベルンゲンの指環」だとしていますし、ラッカム自身、1908年に出した「真夏の夜の夢」をとても気に入って、晩年の1939年に2回目の「真夏の夜の夢」で新しい絵を披露したのだそう。本書はその2つの作品の全ての挿画、約40枚を収めたもの。ハーミアやヘレナ、妖精の女王タイタニアの美しい挿画と、豆の花、蜘蛛の巣、蛾、芥子の種といった小さい妖精たち、素人劇団の面々のユーモラスな絵が対照的です。(画像は洋書のもの)
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リップ・ヴァン・ウィンクル」ワシントン・アーヴィング著 アーサー・ラッカム絵(高橋康也・高橋迪訳)新書館(1981/01)
ある秋の日、犬と一緒に山の中に入ったリップ・ヴァン・ウィンクルは見知らぬ人々と出会い、彼らの酒を飲んで眠り込んでしまいます。そして目が覚めたら20年も経っていたという、浦島太郎的な物語。ワシントン・アーヴィングの「スケッチ・ブック」の中の1編です。元々はドイツの伝説のようですが、リップ・ヴァン・ウィンクルが寝ている間に独立戦争が起こっていたなど、すっかりアメリカ的な物語となっています。ここに収められたアーサー・ラッカムの挿画は40枚。「ピーター・パン」に次ぐ多さです。
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ピーター・パン」J.M.バリー原作 立花えりか文 アーサー・ラッカム絵(高橋康也訳)新書館(1982/01)
これはネバーランドでの冒険の物語ではなく、ケンジントン公園の中の鳥の島で赤ん坊のまま過ごすことになってしまったピーター・パンの物語「ケンジントン公園のピーター・パン」。アーサー・ラッカムの挿画は50枚ほど収録されており、妖精たちの絵がとても素敵。しかし文章がバリーによる原文ではないのですね。立花えりかさんの書かれた物語も楽しいのですが、「リップ・ヴァン・ウィンクル」のように挿画とぴったり合っていないのが少し残念。(画像はアマゾンのアートプリント)
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クリスマス・キャロル」チャールズ・ディケンズ著 アーサー・ラッカム絵(小池滋訳)新書館(1985/11)
未読
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ワンダー・ブック」アーサー・ラッカム絵(野原とりこ訳)立風書房(1988/06)
未読
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イソップ物語」イソップ著 アーサー・ラッカム絵(田辺佐保子訳)新書館(1989/12)
未読
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ウンディーネ」M.フーケー著 アーサー・ラッカム絵(岸田理生訳)新書館(1995/09)
騎士フルトブラントと結ばれて、魂を得た水の精・ウンディーネ。しかしフルトブラントが妻であるウンディーネと以前からの知り合い・ベルタルダとの間で揺れ動いたために、3人は哀しい結末を迎えることに…。美しく哀しい異種族婚礼譚に、アーサー・ラッカムの挿画がとてもよく似合っていて、本当に美しいです。岩波文庫版の「水妖記(ウンディーネ)」の感想は
コチラ。
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シンデレラ」C.S.エヴァンス編 アーサー・ラッカム絵(安達まみ訳)新書館(1995/12)
シンデレラの物語は世界中にありますが、これはシャルル・ペロー版を元にC.S.エヴァンスが再話したもの。これまで読んだシンデレラの物語の中では、これが一番詳しいものでした。シンデレラの本当の名前がエラというのも初めてですし、シンデレラが亡くなる前のお母さんと過ごす場面を読んだのも初めて。もちろん寄宿学校が出来たのは現代になってからなので、C.S.エヴァンスの創作部分が多いのでしょうね。継母と2人の義姉にシンデレラが苛められる場面や、それに対するお父さんの反応もとても具体的かつ現実的です。ラッカムには珍しい影絵のような挿絵もとても素敵です。
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9つの物語-アンデルセンクラシック」ハンス・クリスティアン アンデルセン著 アーサー・ラッカム、マクスウェル・アームフィールド他絵(山本史郎訳)原書房(1999/12)
未読
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不思議の国のアリス」ルイス キャロル著 アーサー・ラッカム絵(高橋康也・高橋迪訳)新書館(2005/12)
元々はジョン・テニエルの挿絵が有名な「不思議の国のアリス」ですが、アーサー・ラッカムの絵も素敵です。特に最後のトランプが一斉に舞い上がってアリス目掛けて降りかかってくる場面の絵が好き。そしてナンセンスたっぷりの物語は、何度読んでも面白いものですね。訳注がこまめに入っていて、駄洒落の原文で使われていた英単語や、作品中で変形されている詩の元々の文章の訳が載っているのも、とても親切です。
アーサー・ラッカム画集・解説作品■
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アーサー・ラッカム」大瀧啓裕監修・解説 河出書房新社(2005/11)
アーサー・ラッカムは、エドマンド・デュラックと共に英国の挿絵本の黄金期を築いた偉大な挿絵画家。感性の豊かな画風は、ラッカムのたゆまぬ努力によって創りあげられたもの。そのラッカムの数々の挿絵を紹介した画集です。「ピーターパン」「リップ・ヴァン・ウィンクル」「楽しい川辺」「不思議の国のアリス」「シンデレラ」「ニーベルンゲンの指環」などに使われた絵を中心に、ラッカムの絵が多数収められています。ラッカムの絵は、どこか深い森の中に迷い込んだよう。独特な存在感のある世界ですね。この画集を見ているだけでもその森の中に引き込まれるような錯覚がありますし、本そのものの装幀も素敵です。
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ミッドサマー・イヴ-夏の夜の妖精たち」辺見葉子 河出書房新社(2006/06)
ペロー童話やグリム童話の人気によって、イギリスでは民間に伝わる妖精物語やアーサー王ロマンスが息を吹き返し、20世紀になるとそういった物語に挿絵をつけた本が大人気となったのだそう。挿絵画家で特に人気が高かったのは、アーサー・ラッカムとエドマンド・デュラック。上の「アーサー・ラッカム」と対となるような本ですが、こちらはラッカムだけでなく、デュラック、ボイル、ヒューズ、シモンズ、ペイトン、グリムショー、フィッツジェラルド、アレン、ダッド、ドイル兄弟等多数の挿絵画家の作品を収録してます。
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ヴィジュアル版 妖精たちの物語」ビアトリス・フィルポッツ(井辻朱美訳) 原書房(2000/06)
アラン・リーやリチャード・ドイル、アーサー・ラッカムその他大勢のイラストが沢山収録されています。図版の出典が巻末にまとめられているため、誰の絵なのか知りたい時にいちいちページを繰らなくていけないのが不便ですが、美しい図版を眺めているだけでも楽しい本。妖精といえばディズニーのティンカーベルが思い浮かぶような人に、妖精とはそういう可愛らしいだけの存在ではないのだと教えてくれます。
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<子どもの本>黄金時代の挿絵画家たち」リチャード・ダルビー(吉田新一・宮坂希美江訳)西村書店(2006/08)
英国でかつてない大型豪華本の出版ブームになったのは、1905年〜1918年のわずか10年余りのこと。経済力のある大人がプレゼント用に購入し、富裕階級の応接間の調度の1つとして楽しまれたのだそうです。この本では、「ヴィクトリア時代の先人たち」「ハワード・パイルと弟子たち」「黄金時代」という3章に分けて、19世紀から20世紀半ばにかけて活躍した挿絵画家たちが紹介されていきます。挿絵画家図鑑とも言えそうな1冊。ただ、ほとんど作品を紹介されていない画家もいるので、1人1枚はカラー図版が欲しかったところですが…。